暗渠めぐり@小部川1

2015年のこと,土木本業界に衝撃的な著書が出版された.
その名も『暗渠マニアック!』(著:吉村生・高山英男)という暗渠本であった.

この本にも収録されているが,神戸市街地を流れる川は「地下河川」と呼ばれ,その多くが暗渠化され地下に潜っている.
この本を読んでどうしても神戸市内のとある川について調べて紹介したくなった.
それも市街地を流れる地下河川ではなく,六甲山を越えた向こうに広がる北区の中心地「鈴蘭台」のど真ん中を流れる暗渠化された河川「烏原川」(からすはらがわ)のことである.

小部川探訪(その1)

さて,烏原川を紹介したいと言ったがその前に「小部川」(おぶがわ)という支流をまず紹介したい.
北区鳴子に端を発し南五葉を経て鈴蘭台南町で烏原川にそそいでいる河川だ.

この川は暗渠に端を発しており,その始まりはこの目で確認できない.
このフェンスの向こうが暗渠となっているのだが,この下辺りが河川の始まり……なのかはさっぱりわからない.


この通り,それっぽくはある.向こうに見えるマンホールには「河川」の文字が入っていたりするのだろうか.


上の写真右手に見えた建物だが,ここにはかつて洪水調整池があり,そこからの水も小部川に流れていた.
昔はそこが河川の始まりだと思っていたんだけど,埋め立てられた後も水が枯れることがなかったことから,どこからか水が流れるなり湧いてきていることがわかる.


この建物の前の道は成子谷と呼ばれた谷であったことからこのどこかに地下水脈なりがあるのかもしれない.


また地図から少し左(西)に行くと,鳴子の団地内に洪水調整池が見えるが,造成前にはこの辺りには成子谷池なる池があったようだ.おそらく元はその辺りに端を発していたのだろう.


小部川は建物の裏側をかつての山の端に沿って流れるのだけれども,どう見ても一段高いところ(中段辺りの柵のある道っぽいところ)をわざわざ暗渠で流れている.


下ってくる.


道が横に退いてここで初めて暗渠から河川が顔を出す.


が,しかし,すぐに道路をくぐるために暗渠に入ってしまう,開渠にする必要はあったのかどうか……


ここを斜めに(たぶん)向こう側へ


反対側から眺める.


この駐車場下が暗渠となっている.この延長上にも洪水調整池があり,そちらにも暗渠は繋がっているのかもしれない.
{追記:調べてみると,どうやら昔はこの道路が走っているところが成子谷であり,先に紹介した成子谷池より流れ出て,(写真向かって)谷の左手に沿って,つまりこの先を奥から流れてきていたようである.}


暗渠が顔を出す……んだけど,この手前のは「第二星和橋」(第一はどこにあるのだろう?)でその向こうの陽がさしているところが実際の開口部となる.


ここから開渠で流れる.川というより大きな溝な趣.


成子橋


しかし,この向こうでまたもや暗渠化されている.


かつては開渠だったのだが,交差点改良に合わせて道路が拡張されたため歩道を確保するために川に蓋をしてしまった.


「南五葉1丁目」交差点に右折レーンが新設された関係で暗渠化された.


再び顔を出す,かつては橋でしかなかったのだけれども.


この先は半開渠となっている.交差点改良された当初は歩道はつぶされてしまい右手の公園を通るように誘導されていたが,近隣住民から不便だという意見が出たのだろう,後から河川上に半部蓋をして再度歩道が設けられた.


半開渠が終わる.


ここで道に沿って河道は南東に向きを変える.


溝よりは少し大きげな,支流が左から合流している.


松前


以降,烏原川に合流するまで開渠だ,いや普通の河川は開渠なんですよ.


ここでも左から水路が合流しているが,その先にそれらしいものは見つからず周辺の水を集めた雨水函渠だろうか.


中山橋


川沿いには柳の並木


唐谷橋


ここでも雨水函渠が合流している.唐谷という名があることから元々谷の流れがあったのかもしれない.


川に面している家は,それぞれが橋をかけて入口を設けている.


鈴蘭橋


鈴蘭橋の袂にある「準用河川 小部川 上流端」の標柱.「え!? ここが小部川の端なの? じゃぁそれまでは……?」心配無用,ここからは“準用河川”という「小部川」になり,一級河川二級河川にも指定されていないが市町村長が指定し河川法の二級河川規定を準用して管理される河川のことで,それまでは“普通河川”という河川法が適用されない「小部川」だった.

暗渠めぐりの第一回「小部川」では普通河川部を紹介した.
次は,引き続き「小部川」の準用河川部を紹介する.